5月のpreview第二弾は・・・
「MY HOUSE」
企画・監督・脚本協力:堤 幸彦
原作:坂口恭平
出演:いとうたかお(主演)、石田えり、村田勘、木村多江、板尾創路
「実在の人物をモデルにした主人公の生活を通し
物にあふれた暮らしの中で”本当に必要なもの”とは何かを問う意欲作」
「あなたの”幸せ”を心地よく破壊する。」
「構想5年、堤幸彦が本当に撮りたかった衝撃作」
というキャッチフレーズが並ぶ本作。
舞台は名古屋。路上生活者鈴本さんをメインに
エリートコースを目指す中学生ショータ(村田勘)、
人嫌いで潔癖症の主婦トモコ(木村多江)
などの人々の暮らしが交差して淡々と描写されていく物語。
全篇白黒で、台詞はミニマム、音楽はエンドロールのみという
極力そぎ落とされた構成で、結論も述べないので
観る人それぞれが想像してね、という映画でした。
監督曰く「いろんな感じ方ができる作品」。
さて、私の感想は置いておいて、Q&Aの内容です。
なぜ名古屋なのか、主役のキャスティングについてはパンフレットに出ているので簡単に。
名古屋は東京よりもさらに学歴格差社会であることは確かで、
今回の構想に合うこと、東京にいると顔見知りで慣れているスタッフが多いので
甘えてしまうため、違う場所でこの企画を実現したかったことなどが挙げられ、
出身地だからというだけではないとのことでした。
キャスティングについては、名古屋在住のフォークシンガーである
いとうさんの歌が好きなことはもちろん、
生き方も、風貌も、ぴったりだと感じたから選んだそうです。
「ホームレス」という言葉についてどういう意識を持っているかという質問には、
彼らは家を持っているので、ホームレスではなく
(だから路上生活者という言葉で逃げている部分もあるが)明確に定義することは難しい。
主人公は「仕事」をし「お金」を稼いで「家」を作り生活している。
ゴミをあさるタイプとは少し違い「自分の意思で」路上生活をしている。
彼らと自分たちは人間として何が違うのか、
彼らの方がはるかに力があるのではないかということを思っているとのこと。
彼らのような人のほうが少ないこともホームレス全体としての問題ももちろん把握した上で、
その環境について問題提起しようとか何かを変えようと訴えるつもりは一切ない。
あくまでも、純粋に「自分の意思で」路上生活をしている彼らを描きたかったのだそうです。
撮影をスタートして3日後に震災が起こったそうですが、
実際にモデルとなった路上生活者さんにお会いした時の衝撃と、
それを伝えたい想いの方が先に立ち、本作にはほとんど震災の影響はないということです。
震災について堤監督の表現を知りたい方は
「Kesennuma,Voices.」を観て下さいと仰っていました。
同席されたプロデューサーの前田さん(写真右)が補足で、
監督が今これを撮ったことには、強い思いがある。
商業的な映画を求められてそれに応えるという使命とは別に、
やはり撮りたいものを撮らなくてはならないという原点回帰の想いも強く、
そこに共感をしたとのことでした。
全てを失ってこそ見えてくるものや強さがあるということ、
私達のいう「家」と路上生活者達の「家」との対比を観て頂ければ、と仰っていました。
私としては、ここは議論してみたい・・・
そこはどうなんだろう・・・等の部分も多々ありますが、
次々と大ヒットを飛ばす堤監督が「撮りたかった」という想いはひしひしと伝わって来ました。
5/26(土)から公開ということで、ご興味のある方は是非。