- 作者: 古谷実
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/07/13
- メディア: コミック
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漫画です。大人気になったあの稲中の作者ですが、ギャグではなくシリアスです。
というより、かなり、かなり、かなり、ヘビー。
いかにも青年誌な画なので、キレイとは言えませんが(むしろグロい)
でもあの画だからの深みというか、凄みというか。
うん、彼にしか描けない世界だよなあ、というのがスゴイところです。
さて、内容ですが、いつものように要約すると、
なんとも薄っぺらくて一辺倒になっちゃうんだなあ。うむ。まあでも一応。訓練のため。
どこで何があっても自分は常に正しい判断ができると信じて疑わない
ありふれた、平凡な、普通(でいようとする)の、中学生男子が主人公。
母が愛人と、そして、父が600万の借金を残して失踪し
家業のボート小屋にひとり残されてから「普通」で居られなくなっていく。
そして彼自身だけでなく、彼の周辺にも様々な事件が起こり、
あらゆるものががらがらと音を立てて崩れていく・・・。
どのエピソードも「キレる」テンションが一様に低くて、妙なリアリティがあります。
イマドキ「ムカついたから刺した」みたいな話はもうニュースでも聞き飽きたくらいで
そういう心理をとても巧く表現していると思います。
主人公は「存在意義」を自分に問い続け、結局絶望的な答えを出したのですが
これって人ごとではないと思ったり。
簡単に「ONLY ONE」とか「個性」を重要視する今の世相っていうのは
一見素晴らしいもののように見えるけれど、
もし自分に何もなかったら?自分が何もできなかったら?
最近の子供達が「やりたいことがなくて悩む」っていうことを
問題視したりもするけれど、そもそももっと根本的な疑問として
みんながみんなやりたいことがなくちゃいけないのか?・・・とか。
主人公が極力目立たないように、「普通」に生きようとしていたのは、
一つ目のバケモノの幻影から逃れるための方法だったのだけれど、
それは何のために?一体バケモノって何だったの?と考えると非常に興味深いです。
更生しようとした最後の最後に、バケモノが現れる。
バケモノのかたちをした、あるものだと、私は思いました。
抽象的で申し訳ないですが、ここで言っちゃうと駄目なんです(汗。
ちょっとグロテスクなものは受け付けないという方には無理だと思いますが
非常に良くできた作品だと思うので、機会があれば是非。
漫画だからといって軽視するのだけは禁物!