- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/11/07
- メディア: 文庫
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (35件) を見る
- 植林
- ルビー
- 怪物達の夜会
- 愛ランド
- 浮島の森
- 毒童
- アンボス・ムンドス
以上7つのお話が収録された短篇集です。
共通するテーマは「女性」。
といっても、美しくて聡明で人気者、というヒロインは出てきません。
普通、あるいはそれ以下の女性達が登場し、
いじめられていた過去や不幸な境遇によって生まれた
卑屈な精神、嫉妬、鬱々とした気分をはき出していくのです。
読後感の悪いことったらもう・・・
これって、同じ女性として
潜在意識の中に自分も同じ物を持っている故でしょうか?
となると、男性と女性では全く違う感想が出て来る気もしますが
どうなんでしょう。気になるところです。
では、表題になっている「アンボス・ムンドス」を。
ある元小学校教師の独白という形式で淡々と語られます。
5年生の担任をしていた浜崎はまだまだ新米教師の24歳。
慣れない土地に赴任して面倒を見てくれた教頭の池辺とは
いつしか不倫関係へと発展していた。
浜崎のクラスが抱える最大の問題は、
「女子の人間関係が複雑で、荒れていた」ことだった。
ことにボス的存在だったサユリの情報収集能力と権力は絶大で、
池辺からは度々「女子に対してだけは、威厳を持て」と言われていたのだが
浜崎には池辺との不倫関係という引け目もあり、
見て見ぬふりをするしかできなかった。
それでもなんとか無事に一学期を終え、ふたりは一週間の海外旅行を計画する。
「どうせ行くのなら、二度と行けない遠いところ、地球の裏側にしよう」
という池辺の提案で、キューバへ旅立つ。
アンボス・ムンドスとはふたりが宿泊したホテルの名前で、
池辺によると「両方の世界という意味」、「新旧ふたつの世界のこと」らしい。
ふたりきりの幸せな時間は、しかし、日本に戻ると同時に音を立てて崩れ落ちる。
それは、成田でふたりを待ち受けていた記者によって知らされることとなった。
「サユリ」が事故死し、今日が告別式なのだということを。
当然ふたりの不倫は日本中に知れ渡り、
やがて自責の念に堪えられなくなった池辺は自らの命を断ってしまう。
残された浜崎は自宅謹慎が解けた後、
サユリと共に川へ遊びに出掛けた残りの3人の女生徒に話を聞くことにした。
サユリの転落事故には、腑に落ちない点がいくつかあり、
それを確かめたいという思いが募っていたからだ。
事件当時の説明を快諾してくれた3人の女の子達が
揃いも揃って寸分違わぬ言葉で
当時の状況を説明することに違和感を覚えた浜崎は、
やがて事件の真相に気付き、愕然とするのだった・・・
************
女子って怖いわよね、とか、子供って残酷よね、的な。
えええええ、そりゃないだろ、っていう感じでもありますが、
あくまでもファンタジーですから。
ブラックな短篇を読み続けて、最後にこの話が来るというのがまた
なんとも言えずニクいというか。
なかなか面白い試みをしている一冊だと思います。
女性にしか書けない女性の内面が書かれているので面白いと言えば面白い。
しかし、あんまり鬱な気分の時には読まないほうがいいかも>特に女性。