- 作者: カルヴィーノ,和田忠彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1995/04/17
- メディア: 文庫
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第二次世界大戦後に活躍したイタリアの作家で、
この短編集は1958年頃のもの(ちょっと確かではないかも)。
「むずかしい愛」の中には「ある○○の冒険」という12篇の短編が収められています。
”○○”は、”兵士”だったり”近視男”だったり”詩人”だったりして、
全編がまったく違う雰囲気で書かれています。
「愛」がテーマですが、全編通してそういう感じはあまり伝わってきません(笑。
所謂恋愛小説を想像して読むと、「?」になるかも。
愛を語る恋人同士も出てこないし、そもそも話しかけもしないで終わったりしていて。
どれも寡黙な主人公が頭の中でぐるぐる言葉を探すばかりで、結局想いを伝えられない・・・
そんなもどかしくてちょっと可愛らしくて、情けなくて、切ない物語がメインです。
解説からちょっと引用。
ここで語られているのは恋愛譚ではなく、愛の不在である。
現実(とよべるかどうかでさえ覚束ない)愛のなかでなら、
おそらく誰もが感じるであろうコミュニケーションのむずかしさを、
カルヴィーノは、それは困難なのではなく、ほぼ不可能だと考えているらしい。
愛を語ることは、その不在をかたることからしかはじめられない、というより、
不在を語ることこそが愛を語る唯一の方法だということなのかもしれない。
うむうう。深いですねえ。
私は「愛=愛を語ること」でしかないと思っていたのでこれは目から鱗でした。
愛と言う名の意志の疎通が不可能だとしたら、
その代替は一体何だろう?というのが自然な問いだと思いますが、
残念ながらその答えはこの短編集の中に書かれていません。
もしかしたらこの問いこそがヒントであり、答えであったりして。
なかなか面白い試みをしている本だと思いました。
文章そのものはそこまで面白いとか巧いってことはないんですが、
そんな背景を考えながら読み進めていくと、かなり面白いと思います。