- 作者: 石黒マリーローズ
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2006/03
- メディア: 新書
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さて、911以来何かと政治文化と宗教が取り上げられるようになってますが
日本人にはちょっと理解できないことが多くありますよね。
その原因のひとつが、宗教教育としての聖書ではなく言語としての聖書を
私たちが意識して学んでいないからだと思います。
私は中学から短大までの8年間一貫校で毎朝礼拝をして、
短大卒業後に進んだ大学の4年間も宗教学や礼拝があるという環境だったので
ニュースのインタビューや映画の翻訳で宗教色の濃いやりとりを省く場面に遭遇して
「あれ?なんでココ訳さないの?」と思うことが多くありました。
この本では、アメリカにおいて生活と宗教がどのように結びついているかということが
沢山の事例を通して丁寧に書かれています。
そもそも"Good-by"が"God be with you"の簡略化だといった基本的なことから
へええええ、ということまで。たとえば・・・
(Hail Mary=Ave Mariaという説明の後)
・・・アメリカン・フットボールで試合終了寸前に一か八かで投げるエンドゾーンへのパスのことを
”Hail Mary Pass"(ヘイルメリーパス)と言います。
スキャンダルが発覚した当時のクリントン大統領の窮状について、
U.S.ニューズ・アンド・ワールド・レポート誌は、
「ホワイトハウスのヘイルメリーパスがなければ、この件は恐らく上院に移されるだろう」
とコメントをしていました。
こんなの、英語で聞いて、そこまで深い意味だったなんて分かるはずないですよね(汗。
この一文の前で、ホワイトハウスと信仰の関係を述べているので、
そうやって読んでみると、アメフト用語でありつつも
聖書的な言葉を敢えて使った記者のウィットが分かります。
と、大変興味深い内容で「翻訳者たるもの言語だけでなく文化を訳すべきだ」ということ
そして「日本人が分からないから省くというのは、間違った翻訳である」ということを
述べていることは良いのですが、如何せん、この著者が敬謙なキリスト教信者なだけに、
なんとも布教活動っぽい本になってしまっているのです。
いや勿体無い。非常に重要な課題であり、日本人の国際理解で足りない部分なのですが
たぶんキリスト教に興味のない人が読むと、ちょっと引くというか、
むしろ嫌悪感を持ってしまうのではと心配になります。
比較文化研究においては、やはり客観的な分析と表現が適切なのではないかなと思いました。
内容は面白いだけに、勿体無い。
日本語の聖書は読み込んでいるので
(いや私は別にクリスチャンじゃありませんが学生時代強制的に・・・)
せっかくだから英語の聖書を読んでみようかな。CNNを英語で聞いているのですが、
なるほどこういうことを知らないと分からんよなーと思ったので。
しかしまあ、物を伝えるって、本当に難しいですね。この本を読んでそう思いました。