- 作者: 太田光
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2006/12/15
- メディア: 単行本
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言わずと知れた爆笑問題・太田さんが、
2004年から2年間雑誌で連載していたエッセイをまとめた本。
自分自身のことから文学、政治、時事問題について語っています。
私は太田さんの大ファンなので「太田さんの書くものだから良い」と決め付けないで
なるべく客観的に読み進めるようにしました。
それでもやはり彼の感性と洞察力、表現方法は素晴らしいと思います。
物事を疑うこと、悩むこと、議論すること、
そういった面倒なプロセスが大切だという彼の思いが伝わってきます。
本を読み終わってふと考えたのが
「この内容で太田さんの本じゃなかったら、読んでいなかっただろうか?」ということ。
マイナーな物書きさんの本だったら?政治家さんの本だったら?
おそらく買っていなかったと思うし、読んでも「ふーん」という感じだった気がします。
そういう意味で、表現者としての太田さんはやはりすごいと思います。
「太田さんの本だから読んでみようか」という土台を築き上げ、
自分の発する言葉の影響力を知りながら、繊細な問題を語っていく。本当にすごい。
・・・我々人間の心の中には常に”言うに言われぬ思い”というものが渦巻いている。
人の心の中は漠然として具体化することが困難な感情で満ち溢れている。
それでも我々は他人にその思いを伝えたいと思う。
そんな時我々はそのすべとして、”言葉”を使う。
例えば恋人に自分の感情を伝える為に「愛してる」と言う。
「愛してる」などという言葉はとても単純で陳腐で、
その人の感情の何万分の一も表現しきれていない言葉である。
それでも我々は人に伝える為に便宜上その言葉を使うしかない。
言われた方は、その言葉を頼りにその言葉の裏に隠れている
漠然とした無限の感情を想像するのである。それが伝えるということだ。
何かを具体化するために無数の漠然としたものを断ち切る作業。それが表現というものだ。
アナログからデジタルへ。”伝える”という力を持つためには
その思い切った変換が必要なのではないか。
「平和」についての考察の一文。
彼は言葉を使うことを生業としているから、言葉の大切さも怖さも知っているんですよね。
そして私もそうありたいと思います。
よく言われることですが、言葉は自分を離れた時点で一人歩きをはじめます。
自分を離れた言葉には受け取る側の解釈が入り、自分を離れた時点で責任が取れないということ。
だから、離れる前に、責任が取れることを取れるように考えて言わなくてはいけないわけです。
彼の本を読んで、彼の言葉を使うこと、表現することへの真剣さを非常に感じました。
そして私もそう在りたい、そう在らなくてはと強く思いました。